東京大学中東地域研究センター UTCMES スルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座

2012年度中東イスラーム世界セミナーの実施報告

第1回「オマーン:激動する中東のオアシス」

講師:森元誠二(農畜産業振興機構理事)
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2012年4月20日金曜日に、駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム4にて、第1回中東イスラーム世界セミナー「オマーン:激動する中東のオアシス」が開催されました。

 冒頭、本セミナーを企画した森まり子特任准教授が、本セミナーの概要と目的を説明しました。続いて今回の講師である森元誠二・農畜産業推進機構理事(在オマーン前日本国大使)が、「オマーンという国」「現国王であるカブース国王の親政がオマーンにもたらしたもの」「『アラブの春』がオマーンにもたらしたもの」「オマーンの地政学的意味合い」「オマーンと日本を結びつけるもの」という5つの観点から、講演を行いました。

 オマーンの紹介において、森元講師は、オマーンが地理的に日本に最も近いアラブの国であること、その人口規模はおよそ茨城県と同じであること、経済規模はおよそ鹿児島県と同じであることなど、オマーンの概要を日本を引き合いに出してわかりやすく説明しました。そして豊富な写真を提示し、オマーンの自然、文化、歴史、地理を説明しました。

 続く現国王のカブース国王の親政がオマーンにもたらしたものについて、森元講師は、カブース国王が即位する1970年以前の、また即位した直後におけるオマーンの状態に言及し、その状態が40年でどのように目覚ましく発展したかを、GDP、国民所得、学校数などのデータから明らかにしました。そして国連開発計画(UNDP)が過去40年で最も人間開発指数が改善された国オマーンを特記していること、このオマーンの発展には日本も協力したことにも付言しました。

 そして「アラブの春」がオマーンについてもたらしたものについて、森元講師はオマーンにおける抗議活動の展開と政府側の対応を説明したあと、「アラブの春」が発生した当時のオマーン内部の事情、オマーンにおける「アラブの春」の特色、そして国民の政治的、経済的、社会的意識全般にわたる変化など、「アラブの春」がオマーンにもたらしたものについて報告しました。そして「アラブの春」が急速に収束に向かった背景には、絶対君主制の下でのカブース国王という啓蒙君主による政治の実効性、効率性、また改革の実施に向けてのカブース国王の揺るぎない信念と、それに対する国民の肯定的理解があったことなどを指摘し、オマーンは激動する中東においてオアシスのような存在であるとの説を提示しました。

 引き続く「オマーンの地政学的意味合い」において、森元講師は、在位40年というカブース国王の経験が、域内のみならず欧米諸国の首脳陣にとってきわめて貴重なものであること、オマーンがホルムズ海峡を領有し、また中東の安全保障において重要な役割を演じていることを指摘しました。そして「オマーンと日本を結びつけるもの」では、両国間の皇室外交、政府間外交、貿易の状況などが説明された後、本スルタン・カブース講座の設立のための交渉、森英恵ファッションショーなど、オマーン在勤中に手がけられた活動が回顧されました。

 セミナーには、長谷川壽一総合文化研究科長をはじめ、様々な分野で活躍する研究者、学生、また一般企業、大使館関係者、官庁関係者が40名ほど出席しました。質疑応答では、国王の後継者問題、国内の部族の動向、労働力のオマーン人化政策の現状、カブース講座設立交渉における苦労など、多岐にわたる質問が出されました。