東京大学中東地域研究センター UTCMES スルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座

2012年度中東イスラーム世界セミナーの実施報告

第3回「リビア:カダフィ政権の挫折と新政権の行方」

講師:塩尻宏(中東調査会副理事長)
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2012年5月25日金曜日に、駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム4にて、第3回中東イスラーム世界セミナー「リビア:カダフィ政権の挫折と新政権の行方」が開催されました。

司会者による本セミナーの概要と目的の説明に続いて、今回の講師である塩尻宏・中東調査会副理事長は、リビアについて、1.中東の国際社会におけるポジションの変化、2.リビアの国勢、3. リビア政権崩壊の概要、4.今後の展望から説明しました。


「中東の今日の国際社会におけるポジションの変化」について、塩尻講師は、アメリカによる一極化の中で、リビアをはじめとする中東諸国が、資本主義経済にチャレンジをする勢力へと転換していることを指摘しました。加えて、情報化社会によって、民衆の間にくすぶる不満が治安警察の目を逃れ、大きなパワーとなることも可能になってきていると論じました。

 続く「リビアの国勢」の中で、塩尻講師は、地中海諸国におけるプレゼンスの高さの例として、リビアがアフリカ大陸最大の地下資源を持つ国であることを挙げ、その地下資源はヨーロッパ諸国を支え、特に英仏伊の注目を集めていたことを取り上げました。そしてカダフィ政権の外交政策を概観した後、リビアにおける政権崩壊の要因として、自国の経済に影響を与えうる欧米諸国や、人道的問題の観点から国際社会も大きく関与したこと、またNATOをはじめとする外国の勢力が武力によってカダフィ政権側に圧力をかけたことを挙げました。


 そして新生リビアの課題について、トリポリとベンガジの二大都市の関係、新政権を支える行政経験者の不足、部族間の利益構想の再発が懸念されるとし、リビアの統一した全体組織を早く固める必要があると語りました。また、リビア自身も努力を続けているものの、カダフィ政権後、リビアへの関心が薄まりつつある中で、自国に直接利益のない国々が、リビアの国づくりにどのようにかかわっていくかという問題も提起されました。

 セミナーには、大学教員をはじめ、企業関係者や学生など、30名ほどが参加しました。質疑応答では、国民レベルでは実際にどれくらいの不満があったのか、2008年のリーマンショックはリビアにどのような影響を与えたのか、など幅広い質問が出されました。