東京大学中東地域研究センター UTCMES スルタン・カブース・グローバル中東研究寄付講座

2012年度中東イスラーム世界セミナーの実施報告

第4回「2012年におけるイラン情勢の展開:核問題を巡る緊張」

講師:田中浩一郎(日本エネルギー経済研究所)
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 2012年6月1日金曜日に、駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム4にて、第4回中東イスラーム世界セミナー「2012年におけるイラン情勢の展開:核問題を巡る緊張」が開催されました。

 はじめに田中講師は、昨年秋から今年の4月上旬まで続いたイラン危機の急激な深刻化の背景を4つ提示しました。そのうちの一つとして、諸安保理決議を無視してイランが核開発をしたとする言説を取り上げました。そして核兵器開発疑惑を検証するためには、イランの核兵器の開発能力に目を向け、核分裂物質の量が少なければ兵器はないということになるが、ストックがあるということは、研究の一部は進行している、というように「逆算」的に考えていく手法をとることが重要であると論じました。

 続いてIAEAの最新報告書の内容や、「グリーンソルト計画」、またイランが核爆弾を作るための実験を行ったとする『疑惑の研究』についての説明がありました。この中で田中講師は、この情報は特定国によってまとめられており、政治的意図の入っている可能性も否定できないために、外部専門家は「疑惑の研究」に疑問を持っていること、また外交官も「疑わしきは罰する」という考え方ではなく、グレーゾーンであればそれはそれとして、別の証拠を探す試みを続けていることを指摘しました。

 そしてイランにおける原子力エネルギーの核兵器化へのハードルの高さについて、田中講師は、反対論や慎重論の封殺、国際法上の問題や兵器製造のための技術の飛躍の必要性といったいくつかのハードルの中でも、大量破壊兵器は宗教権威によって禁止されているため、特に宗教的動機付けがきわめて高いハードルであると論じました。加えて、対イラン攻撃の前提条件として、軍事的側面・地政学的側面・外交的側面を挙げ、米国とイスラエルの対応についても触れました。
 最後に田中講師は、LNGの輸入を湾岸諸国に頼る日本にも影響の出る、ホルムズ海峡有事シナリオといった、国際エネルギー情勢への影響について説明し、その構図と問題点を指摘しました。

 今回のセミナーには、研究者や学生などが多く参加しました。質疑応答の時間には、イラン国内では核問題がどうとらえられているのか、日本はどのようにこの問題とかかわる必要があるのか、という質問が出され、議論されました。